そうか、
最後まで泳ぎ切れてよかった・・
透き通った夏の競泳用プール。
沢山の小学生が泳ぐ姿を見ながら、
よく頑張ったな~
とある意味、感慨深く思うのです。
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数年前のある日、こんな電話がかかってきたのです。
「全国のプール会報誌に、お子さんの名前を載せても良いですか?」
いや~ビックリした。
通っている大手スイミングスクールでは、年に1回、【公式記録会】があります。
スクール生全てを対象に、水泳のタイムを計るのです。
上位に食い込んだ人、
- そのスクールで成績10位以内
は表彰されるとのこと。
そんでもって、
- 全国のスクール合わせて成績20位以内
は期間限定ですがホームページに名前が載るとのこと。
当時はコロナ禍だったこともあり、プールの見学できるスペースは、第一週は女の子の親、第二週は男と子の親・・という縛りがありました。
プールの見学スペースに行ったとしても、まだまだ三男がよちよち歩き。
ゆったり見学なんて無理なので、基本、スイミングスクールの入り口に車をベタ付けし、乗り降りしてもらう形で毎回送迎していました。
それもあり、ハッキリ言って、長男と次男がどのように泳いでいるのか、そのタイムは如何なものなのかも全然知りませんでした。
そのため、大手スイミングスクールの本部から、
「成績上位なので名前を掲載しても良いですか?」
と確認の連絡が来た時は心底ビックリしました。
何位ですか?
と尋ねたところ、
全国で10位以内に入るとのこと
うん。
ビビった。
さすがの私も人違いじゃないですか?と思いました。実際は、夫の電話にかかってきたのですが、夫も人違いと思って聞き直したらしいです。
でも合っていると。
間違いないと。
うちの子だと。
いいですか。みなさん。
自分の子が全国で10本の指に入ると聞いた親は、
有頂天になります。
絵に描いたように調子に乗ります。
ルンルンです。
自分のこと以上に、凄く嬉しいものです。
あの自慢話が大嫌いな夫でさえ、いつもと調子が違いました。
その年のお正月の親戚の集まりで、夫が子供のスイミングの話をしていました。彼の親戚は大学教授や恐れ多い有資格者が多く、ちょっと大学に入ったくらいでは誰も自慢しませんが、そこで嬉しそうにスイミングの話をしていました。
んでもって、私も友人やママ友に嬉しそうに「きいてきいて~」と自慢してしまいました。
自分のことより、
我が子が認められることは相当嬉しいものだと、
この時初めて知りました。
小学校でも同じスイミングに通う同級生は多く、一時話題にあがったようです。
「ぽに長男、めちゃくちゃ水泳が速いらしい」と。
校内でちょっと有名になったとのこと。
いや、何が出来ても、出来なくても、
私達夫婦にとっては大好きな長男です。
なので、プレッシャーをかけることはせず、本人とスイミングのこれからを話しました。
週に通う回数を増やしたければ増やそう。でもこのままでもいい。自分で考えてみて。
と声をかけました。
本人、「それよりも、学童行ったり、遊びたいな~」ということで、特に何か切り替えた訳ではありません。
もしも、誰が見てもキラリと光る才能があるのならば、選手コースに引き抜かれるでしょう。
その時考えればいい。
なーんて思っていたのです。
ちょっと期待しながら。
でも、まぁ、
そんなこともなく、月日が流れました。
5年生の半ばくらいでしょうか。
ふと、スイミングを見学してみました。
あの時から体型も変わり、身体がとても大きくなった長男でしたが、前よりも肩の可動域が狭くなり、なんでしょ。
泳いでいる際に、水に身体が浮かんでいる部分が少なくなったような気がしました。
要するに、
速くなったのではなく、
遅くなり、もたついているような感じ。
うん。
そうか。そうか。
それでも本人、スイミングは大好きで、
中学受験塾の合間を縫ってルンルンで通っていました。
そして、6年生の夏。
市が運営する公式の記録会が行われました。
中学受験の天王山と言われる夏休みですが、7月はなんとなんと、フリータイムでの契約をし、何度もスイミングに通いました。
私も大丈夫かいな?受験・・と思っていましたが、勉強漬けの毎日にレッスンを入れるとリフレッシュできたようです。
うん。
水泳での全国表彰は、
こんなことを言ったら申し訳ないですが、
特に何も取り柄がなかった長男の人生を一変させました。
小さな経験ですが【全国10位以内】という勲章はもの凄いもので、控えめで陰キャの彼に自信を与えました。
話し方すら堂々とさせました。
今まで、友人と話す時には、なんだか小さなマウントを取ったり取られたりするのが常でしたが、そんなやり取りが激減しました。
自分は自分。
それでよし。
という確信になったような感じがしました。
水泳のタイムが高学年に上がるにつれて、
大したことなくなっても、
「いや~昔は速かってんけどな~って、まだ11年くらいしか生きてないけど。」
と言えるくらい、大きな自信となりました。
そして、6年の市の記録会。
目立たない番号で、目立たないコースで、
目立たない順位で帰ってきました。
終わった後。
「いや~楽しかった。泳ぎ切った!」
おそらく、
納得のいく順位でも決してなく、
数年前にもしかして・・と描いていた、
みんなを驚かす記録を出す自分はいない。
でも、自分は自分。
前を向く。
母は、青すぎる空を見ながら、
そんな長男を頼もしく思いました。
ではまた!
